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: 人類史上最高のやきもの 青磁水仙盆 :



●特別展「台北 國立故宮博物院―北宋汝窯青磁水仙盆」 展

:大阪市立東洋陶磁美術館
:2016/12/10 ~ 2017/03/26

http://www.moco.or.jp/exhibition/current/?e=366


一つ得るということは 一つ失うということ
だとすれば、当然

美術館に足を運ぶのも コストやリスクを勘案して、
(例えば 列に数時間も並んでまで 見るべきものなのか)
自分の中で 折り合いをつけて、訪問している はずですが、

本展には 多少のコストを払い リスクを犯してでも、行く べきかも知れません。

なんたって ポスターのコピーにあるように

「人類史上最高のやきもの 海外初公開、初来日。」
「もう、二度と出会えないかもしれない。たった6点、世紀の展覧会。」
「神品降臨」

なのですから。

しかも、実際のところ、
前評判どおり 予想されたとおり 人気展には違いないのですが、
(アホほど混み合ってはいない)
ちょうど良い 賑わいぶり で、

後述の 「特集展」・「常設展」も一緒に見れることを思えば、
入館料1200円は、コストやリスクに見合わぬ お得さ だと言えます。


さて、
本展の何がスゴいのかは、公式サイトにも 解りやすい解説がありますし、
すでにご覧になった 陶磁マニアの方々のブログ等も あるでしょうから、
そちらに譲る としまして、

私が感嘆した 本展のスゴさ を簡単に……


1.「青磁無紋水仙盆」の無文ぶり がスゴい

2.東洋陶磁美術館 蔵の「水仙盆」の正面に 「飛び」が1つだけ入っている のがスゴい

3.同じ形の「青磁水仙盆」の「汝窯 5点」と「景徳鎮官窯 1点」と「日本の現代作 2点」が比較できる のがスゴい

4.水仙盆の「付属品」も スゴい

5.乾隆帝の「思い」が スゴい そもそも皇帝の権力 がスゴい

6.東洋陶磁美術館と 國立故宮博物院の 交流ぶり がスゴい

7.特集展 「宋磁の美」との連動ぶり がスゴい

8.この度 新発見され 国内3点目の「汝窯青磁」と確認された 「青磁盞」 がスゴい

9.あまり同時には陳列されない 同館蔵の
  「国宝 油滴天目茶碗」・「国宝 飛青磁花生」・「重文 青磁鳳凰耳花生」・「重文 木葉天目茶碗」
  の4つの茶道具が 一度に見れる のがスゴい


解説にもあるように、
皇帝の「猫の餌入れ」とも蔑称された「水仙盆」の本来の用途は、
「筆洗」であるとか 「不明」だとか 書かれるけれど、

水仙には 青磁が 本当によく似合う。

それも、
(茶道具としては「砧青磁」や「七官青磁」や「天龍寺青磁」といった分類がされるけど)
このような「天青色」が よく似あう。
(七官や天龍寺では… …)

夜咄などで使われる 「石菖鉢」などは
逆に 砧青磁では 美女と野獣 である。

この形といい、「猫の餌入れ」以外では 水仙専用の器 が、「水仙盆」の有り様では ないだろうか???

中国の歴史が何千年か 詳しくは知らないが、
ある一つの花 専用の容れ物 があるなんて
これぞ 「文明」 では ないだろうか。

一つの文明の成り立ち の下には 何千何万もの犠牲が 隠れている ものだけれど…

何千何万もの 人々の思いや力が 成し遂げた 落ち度なく完成された「美」…


写真:「青磁水仙盆」 島田幸一 (撮影可能コーナーより)


*

幼い頃から 何百展 行っているか判らないが、
今回 人生で始めて「音声ガイダンス」というものを 借りてみた。
(思えば 貸し出す側には たっていた時期があったのだけれど…)

こういうキャプションも読めぬほど 混雑している展覧会には
なかなか 便利なものだと あらためて知った。

学芸員さんたちが 苦心して設定した展示順に 素直に従わず、
空いている展示を ヒットアンドアウェイ式に 狙い撃ちして
後で頭の中で 展示順に組み立て直して するには
歩きながらでも聞ける「音声ガイダンス」には、文字にはない長所があるものだ とあらためて知って
勉強になった。