:利休百首 (読み・意味・現代語訳・解説) アプリ:
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Q.「利休百首」とは?
A. 俗に 千利休が 茶道の精神、点前作法の心得などを、初心者にもわかりやすく憶えやすいよう 歌にまとめて、百首集めたもの…と言われ、「利休道歌」とも呼ばれる。
Q.本当に利休が詠ったの?
A.必ずしも 全て利休の作とは限らず 後世まとめられたもの…と考えられる。(別に「紹鴎百首」「利休五十首」「石州百首」などもある)
Q.102首 載っていますが、なぜ?
A.現在 流布している多くが、裏千家11代 玄々斎が「〈法護普須磨〉反故襖【ほごふすま】」と称して 点前作法の種別、道具の扱いなどを襖に細かく書き連ねた終わりに 「利休居士教諭百首詠」とまとめた100首に、更に後世 利休の作と推測の2首が加わったもの。
Q.後世の2首が知りたいのですが?
A.ここでは 百首に番号をふり その2首については●.として表した。また、読みを【 】で表し、意味は( )内に下段に記した。
なお、上記 「法護普須磨」「利休居士教諭百首詠」については 「国立国会図書館 デジタルコレクション」で参照できる。
▲ 写真:【石橋静友堂 ねっと店】 横物画賛 茶碗ノ画 「茶の湯とは〜」 *前大徳 福本積應* 招春寺*京都船井*[7kam041021]
http://seiyudo.ocnk.net/product/8126
※ 利休百首の扇子は、行書・楷書・現代仮名遣い 等々 http://seiyudo.ocnk.net/product-list/23 にございます。
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1 . その道に入らんと思ふ心こそ 我身ながらの師匠なりけれ
(やってみようと思う気持ちが最も大事で その自分の気持ちこそが 最後まで寄り添う師匠なのです)
2 . ならひつゝ見てこそ習へ 習はずによしあしいふは愚かなりけり
(やってみもせずに 見ただけで頭の中だけで あれこれ決めつけるのは良くありません)
3 . 心ざし深き人には いくたびもあはれみ深く奥ぞ教ふる
(熱心な人は 何度も丁寧に親身になって 教えてもらえるでしょう)
4 . はぢをすて人に物とひ習ふべし 是ぞ上手の基【もとゐ】なりける
(恥ずかしがらずに聞き 習うことが 上達の一番の土台となります)
5 . 上手にはすきと器用と功積むと 此の三つそろふ人ぞ能【よ】く知る
(上達するには まず好きであり 要領よく かつコツコツと努力する この3つが大事です)
6 . 点前にはよわみを捨てゝたゞ強く されど風俗いやしきを去れ
(お点前は なよなよと弱々しいのも 逆に力が入りすぎて武張ったのも 拙いふるまいです)
7 . 点前には強みばかりを思ふなよ 強きは弱く軽く重かれ
(力みすぎず 軽い場面では重々しく 重い場面では重苦しくない軽やかさを 心がけましょう)
8 . 何にても道具扱ふたびごとに 取る手は軽く置く手重かれ
(どのような動作でも 物の重さを感じさせないように 取る時は流れるように 置く時はゆっくりと)
9 . 何にても置付けかへる手離れは 恋しき人に別るゝと知れ
(物を置く時は サッと離さずに 愛しい人との別れ際のような 名残惜しそうな 余韻が生じるでしょう)
10 . 点前こそ薄茶ににあれと聞くものを 麁相【そそう】になせし人はあやまり
(お点前の根本であり真髄は薄茶です 基礎を軽々しく思う人は その先の道もないでしょう)
11 . 濃茶には点前を捨てゝ一筋に 服の加減と息を散らすな
(濃茶は お点前を見事にしようと考えず まずは服加減です 下腹に力を込め ゆっくりと息を整え 練りましょう)
12 . 濃茶には湯加減あつく 服はなほ淡【あわ】なきやうにかたまりもなく
(濃茶を練るには湯は熱めで 茶碗をよく拭き 初めの練りを充分にしましょう 二杓目の前に泡やダマがないように)
13 . とにかくに服の加減を覚ゆるは 濃茶たびたび点てゝ能【よ】く知れ
(濃茶の服加減を覚えるには 繰り返し濃茶を練る ということに尽きます)
14 . よそにては茶を汲みて後 茶杓にて茶碗のふちを心して打て
(茶杓や茶筅を茶碗に当てる際は 注意して行いましょう 特に自分の茶碗でない場合は)
15 . 中継【なかつぎ】は胴を横手にかきて取れ 茶杓は直に置くものぞかし
(中次は棗と違い 上からでなく 胴を横手に取り 茶杓を水平に上から置きましょう)
16 . 棗には蓋半月に手をかけて 茶杓は丸く置くとこそ知れ
(棗を扱う時は鷲づかみにせず 柔らかく持ち 茶杓を載せる際も棗の丸みを感じさせながら置きましょう)
17 . 薄茶入蒔絵彫もの文字あらば 順逆覚えあつかふと知れ
(絵などのデザインのある薄茶器は 蓋と身のつながりや デザインの正面を意識しながら点前し 拝見に出しましょう)
18 . 肩衝は中次とまた同じこと 底に指をばかけぬとぞ知れ
(肩衝の持ち方は中継と同じです 横からですが 底に小指を掛けてはいけません 鷲づかみも避けましょう)
19 . 文琳や茄子丸壺大海は 底に指をばかけてこそ持て
(文琳・茄子・丸壷・大海などの大きさや形のものは 肩衝と違って 底に小指を掛けた方が 美しく 安全です)
20 . 大海をあしらふ時は 大指を肩にかけるぞ習ひなりける
(大海茶入をあしらう時は 左手の親指を 必ず上に掛けましょう)
21 . 口広き茶入れの茶をば汲むと言ひ 狭き口をばすくふとぞ言う
(大海や鮟鱇などの口広の茶入からは 茶は「汲む」ような気持ちで それ以外からは「掬う」ような気持ちで)
22 . 筒茶碗深き底よりひき上り 重ねて内へ手をやらぬもの
(茶巾で筒茶碗を拭く時は まず底を拭いてから 後で口縁を拭きましょう 清めた部分を指で汚さぬためです)
23 . 乾きたる茶巾使はば 湯をすこしこぼし残してあしらふぞよき
(万が一 茶巾が乾きすぎていると感じた際は 茶筅通しの湯を捨てる際 少し湿りを残しておくという臨機応変さを)
24 . 炭置くはたとひ習ひに背くとも 湯のよくたぎる炭は炭なり
(時には「撞木」「十文字」「縁切り」など 炭手前で悪いとされる炭のつぎ方でも よく湯が湧く炭こそが 理想の炭の置き所です)
25 . 客になり炭つぐならば その度に薫物【たきもの】などはくべぬことなり
(亭主に所望され炭をつぐ場面がきても 客は香をくべてはいけません 室内の不浄の気を去るのは 亭主の役目です)
26 . 炭つがば 五徳はさむな十文字縁をきらすな釣合を見よ
(炭をつぐ時は様子をよく見ましょう 五徳を挟んだり 十文字に置いたり 炭と炭の縁を切ったり してはいけません)
27 . 焚【も】え残る白炭あらば 捨て置きてまた余の炭を置くものぞかし
(初炭の枝炭が燃え残っていれば そのままにして 後炭の枝炭を加えるものですよ)
28 . 炭置くも習ひばかりにかかはりて 湯のたぎらざる炭は消え炭
(慣習や習慣ばかりに固執して 湯が沸かないのは本末転倒であり 炭が無いのと同じことです)
29 . 崩れたる其の白炭をとりあげて 又焚きそへることはなきなり
(枝炭は崩れてしまっても 置き直さずに 景色としましょう)
30 . 風炉の炭見ることはなし 見ぬとても見ぬこそ猶【なお】も見る心なれ
(炉と違い 風炉では初めに炭は拝見しませんが だからこそ心で その炭の様子を感じたいものです)
31 . 客になり底取るならば いつにても囲炉裏の角を崩しつくすな
(廻り炭などで 客が炉中を触る場合は 四隅に掻き上げてある灰を崩さぬよう 注意しましょう)
32 . 客になり風炉のそのうち見る時に 灰崩れなん気づかひをせよ
(見事に整えられた灰形ほど 固すぎず 特に崩れやすいものです 風炉の拝見は静かに行いましょう)
33 . 墨蹟【ぼくせき】をかける時には たくぼくを末座の方へ大方は引け
(書などの掛物を軸釘にかける時は 巻緒【まきお】はそのままにせず 下座の方に寄せておくほうが良いでしょう)
34 . 絵の物をかける時には たくぼくを印ある方へ引きおくもよし
(画の掛物をかける時の啄木【たくぼく】は 筆者の落款のある側に 寄せておくのも良いでしょう)
35 . 絵掛物ひだり右むき向ふむき 使ふも床の勝手にぞよる
(画の掛物は 主題が右よりのもの 左よりのもの などがあるので 床の構造・配置に合わせて吟味しましょう)
36 . 掛物の釘打つならば 大輪【おおわ】より九分下げて打て釘も九分なり
(軸竹釘を打つ場所は 天井の回り縁より約27mm下です 壁から出ている釘の長さも約27mmになります)
37 . 床にまた和歌の類をばかけるなら 外に歌書をば飾らぬと知れ
(道具の取り合わせはよく考えましょう 完全に重複するものは 避けた方が賢明です)
38 . 外題【げだい】あるものを余所【よそ】にて見る時は まず外題をば見せて披【ひら】けよ
(由緒ある軸は内容と同じくらい外題に意味のあるものです 「軸飾り」点前のように 先に外題を拝見しましょう)
39 . 品じなの釜によりての名は多し 釜の総名鑵子【かんす】とぞ言ふ
(◯◯釜・××釜とたくさんの種類がある釜ですが ひっくるめると ただの鑵子=釜です)
40 . 冬の釜 囲炉裏縁より六七分高くすゑるぞ習ひなりける
(炉の釜の懸け方は その口が炉縁より 2cm程度高くなるように据えましょう)
41 . 姥口【うばぐち】は 囲炉裏ぶちより六七分低くすゑるぞ習ひなりける
(姥口釜は胴の上部に柄杓をのせることとなるので 逆に炉縁より2cm程度低く据えましょう)
42 . 置合せ心をつけて見るぞかし 袋は縫目【ぬいめ】畳目に置け
(道具の配置は注意しましょう 仕覆などは 縫い目が畳目に合うように置けば バランスが取れるでしょう)
43 . はこびだて 水指おくは横畳二つ割りにてまんなかに置け
(運び点てで水指を置く時は 畳の横幅を二つ割りにした真ん中に置きましょう)
44 . 茶入また茶筅のかねをよくも知れ 跡に残せる道具目当に
(お点前中の道具の位置は 動いていない他の道具を目印にしましょう)
45 . 水指に手桶出さば 手は横に前の蓋とりさきに重ねよ
(手桶水指は 手を横一文字にし 両手で前の蓋を取り 向こうの蓋に重ねましょう)
46 . 釣瓶こそ手は竪におけ 蓋取らば釜に近づく方と知るべし
(釣瓶水指は 手を縦にして 釜に近い方の蓋を取り 向こうの蓋に重ねましょう)
47 . 余所などへ花をおくらば その花は開きすぎしはやらぬものなり
(自宅に咲く花がきれいだから差し上げよう としても 既に咲ききっているものは いけませんよ)
48 . 小板にて濃茶を点てば 茶巾をば小板のはしに置くものぞかし
(濃茶の時 荒目板などの風炉の敷板に茶巾をのせる場合 茶巾は右前角に置きましょう)
49 . 喚鐘【かんしょう】は 大と小とに中々に大と五つの数を打つなり
(喚鐘は大・小・中・中・大と5回うちましょう)
50 . 茶入れより茶掬【すく】ふには 心得て初中後【しょちゅうご】すくへそれが秘事なり
(茶入から茶を掬う時は 3杓淡々と掬わずに 序・破・急を意識するのがコツです)
51 . 湯を汲むは柄杓に心 つきの輪のそこねぬやうに覚悟してくむ
(柄杓はデリケートなので注意をはらって 柄【え】と合【ごう】の繋ぎ目である「月の輪」を台無しにしないように)
52 . 柄杓にて湯を汲む時の習ひには 三つの心得あるものぞかし
(1.合【ごう】満杯にせず 9分目に汲む 2.水は容器の中ほどから汲み 湯は底の方から汲む 3.「油柄杓」をしない)
53 . 湯を汲みて茶碗に入るゝ其【その】時の 柄杓のねぢは肘よりぞする
(茶碗に湯を入れる時の 柄杓を持つ手は 手首だけを返すことをせず 肘から動かす)
54 . 柄杓にて白湯【さゆ】と水とを汲む時は 汲むと思はじ持つと思はじ
(何事も肘から動かすことで自然と成るが そのコツは「水を汲んでいる」「柄杓を持っている」ことに無自覚になること)
55 . 茶を振るは手先をふると思ふなよ 臂【ひじ】よりふれよそれが秘事なり
(茶筅も同様に 手先で振ろうとせず 肘から振る それが秘事)
56 . 羽箒は 風炉に右羽よ炉の時は左羽をば使ふとぞ知る
(風炉は左側 「陽」にあるので右羽根の羽箒を 炉は右側 「陰」にあるので左羽根の羽箒を それぞれ用います)
57 . 名物の茶碗出でたる茶の湯には 少し心得かはるとぞ知れ
(由緒ある茶碗が使われた場合は 常とは異なる 特別な作法が必要ですよ)
58 . 暁は数寄屋のうちも行灯【あんどん】に 夜会などには短檠【たんけい】を置け
(「陽」である暁の茶事には 覆いのある「陰」の行灯を 「陰」である夜咄【よばなし】には 炎が見える「陽」の短檠等を)
59 . ともしびに陰と陽との二つあり あかつき陰に宵は陽なり
(前首の説明 灯火に陰陽の種類があり 暁には陰の明かりを 夜には陽の明かりを)
60 . 灯火に油をつがば多くつげ 客にあかざる心得と知れ
(お客に遅くまで遠慮なくゆっくり過ごしてもらうために 灯芯は長く 油も多く入れておきましょう)
61 . いにしへは夜会などには床のうち 掛物花はなしとこそきけ
(夜咄の掛物は大字か逆に細字 花は白い花が良いでしょうが 昔 利休以前は 軸も花も用いなかったものですよ)
62 . いにしへは名物などの香合へ 直にたきもの入れぬとぞきく
(由緒ある香合には 直に香を入れず 青葉や紙を敷く方が良いでしょう)
63 . 炉のうちは 炭斗瓢【ふくべ】柄の火箸陶器香合ねり香と知れ
(炉用の道具は 瓢の炭斗 柄のついた火箸 焼物の香合 煉香ですよ)
64 . 風炉の時 炭は菜籠【なかご】にかね火箸ぬり香合に白檀をたけ
(歴史的に炉より先に成立した風炉には 菜籠【さいろう】の炭斗 金属の火箸 塗物の香合 白檀と中国由来の物を使います)
65 . 蓋置に三つ足あらば 一つ足まへに使ふと心得ておけ
(3本足の蓋置は 足の一つが自分の方に向くように 使うことを憶えておきましょう)
66 . 二畳台三畳台の水指は まづ九つ目に置くが法なり
(台目畳のお点前は 台子 長板の点前に準じます 水指は客付の畳目から九つ目くらいに置きましょう)
67 . 茶巾をば 長み布幅一尺に横は五寸のかね尺としれ
(茶巾の寸法は 長さ約30cm 幅約15cm ですよ)
68 . 帛紗をば 竪は九寸よこ巾【はば】は八寸八分曲尺【かねじゃく】にせよ
(帛紗の寸法は 縦は約27cm 横は約26cm とするのが良いでしょう)
69 . うす板は 床かまちより十七目または十八十九目に置け
(薄板は床框【とこがまち】より 17〜19目くらいの位置に置きましょう)
70 . うす板は 床の大小また花や花生によりかはるしなじな
(「真行草」と区別しますが 薄板には 矢筈板・蛤板・丸香台と 種類があり 花入や床の様子によって 使い分けますよ)
71 . 花入の折釘打つは 地敷居より三尺三寸五分余もあり
(床の壁に打つ無双釘(中釘)は 地敷居より約1mくらいの高さにうちましょう)
72 . 花入に大小あらば見合せよ かねをはずして打つがかねなり
(花入には大小あるので 前首の歌の寸法を固守してはいけません これはすべての寸法に言えることです)
73 . 竹釘は皮目を上に打つぞかし 皮目を下になす事もあり
(竹釘は皮目を上に打つのが原則ですが 下にすることもあり 小堀遠州や金森宗和などはそうしました)
74 . 三つ釘は 中の釘より両脇と二つわりなるまんなかに打て
(可動式の「三幅対釘」でなく 残りの2つも軸釘を打つ時は 中心の釘から床の左右それぞれの真ん中に打ちましょう)
75 . 三幅の軸をかけるは 中をかけ軸さきをかけ次に軸もと
(三幅を掛ける時は まず中の掛物を 次に上座(内容の書き出しの方) 最後に下座(書き終わりの方)を 掛けましょう
「大横物」を掛ける時は まず中の釘に掛け 次に左に掛け そして右を掛け 最後に中の釘から掛緒をはずします)
76 . 掛物をかけて置くには 壁付を三四分すかしおくことゝきく
(壁や掛物を傷めないように 掛物は壁から1cmほど離れるように掛けましょう)
77 . 時ならず客の来らば点前をば 心は草にわざを慎しめ
(不意にお客様が来られた時は 仰々しい点前でなく さりげなく 慎ましやかで丁寧な接待を心がけましょう)
78 . 花見よりかへりの人に茶の湯せば 花鳥の絵をも花も置くまじ
(花見帰りの人をもてなすのに 見たばかりの同じ花を飾ったり 同じような掛物をかけても きっと興ざめでしょう)
79 . 釣舟は くさりの長さ床により出船入船浮船【でぶねいりふねうきぶね】としれ
(釣舟花入は床の様子 等で向きを決めますが 明かり口へ舳先を向けるのを出船 逆を入船 置き飾るのを浮船と呼びます)
80 . 壺などを床に飾らん心あらば 花より上にかざりおくべし
(茶壺など重要なものを床に飾る場合は 花入よりも上座に飾りましょう)
81 . 風炉濃茶必ず釜に水さすと 一筋に思ふ人はあやまり
(風炉の濃茶では必ず水を一杓さすと決まっていますが 固守せず 臨機応変に湯の温度をみましょう)
82 . 右の手を扱ふ時はわが心 左の方にありと知るべし
(動作は動かしていない部分にこそ注意を払いましょう 左右が一体化してこそ点前です)
83 . 一点前点つるうちには 善悪と有無の心のわかちをも知る
(すみずみにまで注意を払うということは 逆に 無心になるということです お茶が点ち終わるまで)
84 . なまるとは 手つづき早く又おそく所々のそろはぬをいふ
(流れるような動作でなく テンポがバラバラな点前を 「なまる」点前と呼びますよ)
85 . 点前には 重きを軽く軽きをば重く扱ふ味【あぢは】ひをしれ
(何度も思い出しましょう 重いものは軽く 軽いものこそ重々しく ですよ)
86 . 盆石をかざりし時の掛物に 山水などはさしあひと知れ
(盆石は山水の景色を表現した飾りですから 山水画を掛けては 「差し合い」 差し障りとなりますよ)
87 . 板床に葉茶壷茶入品々をかざらで かざる法もありけり
(板床の場合は茶壺や茶入などを飾らないのが原則ですが 奉書紙を敷く等して 飾るやり方もありますよ)
88 . 床の上に籠花入を置く時は 薄板などはしかぬものなり
(籠花入の中には 必ず「落し・受け筒」が入っているので 床に置く場合でも薄板は必要ありませんよ)
89 . 掛物や花を拝見する時は 三尺ほどは座をよけてみよ
(床のものを拝見する時は 極端に近づき過ぎてはいけませんよ)
90 . 稽古とは一より習ひ十を知り 十よりかへるもとのその一
(稽古に終わりはありませんよ 解ったつもりになっても もう一度最初を思い出しましょう)
91 . 茶の湯をば 心に染めて眼にかけず耳をひそめてきくこともなし
(茶の湯とは 見たり聞いたりして理解するものではありませんよ 内なるものを 実践する ことですよ)
92 . 目にも見よ耳にもふれて香を嗅ぎて 事を問ひつつよく合点【がてん】せよ
(お稽古では しっかり見聞きし 何事にも触れ よく質問し 理解しましょう)
93 . 習ひをばちりあくたぞと思へかし 書物は反古【ほご】腰張にせよ
(教えてもらったことはゴミだと思いなさい 稽古帳はリサイクルに出しなさい 内なるものが実践できてこそ茶の湯ですよ)
94 . 茶を点てば茶筅に心よくつけて 茶碗の底へつよくあたるな
(今しているその動作一つに心を置きましょう 集中しかつ無心であること 内なるものがあれば 茶筅は茶碗の底に付きすぎません)
95 . 水と湯と茶巾茶筅に箸楊枝柄杓と心 あたらしきよし
(客を迎える前に 消耗品は新しくしますが まず 心が新しくなくてはなりませんよ)
96 . 茶はさびて心はあつくもてなせよ 道具はいつも有合【ありあひ】にせよ
(質素でも気持ちがこもってさえいれば それが一番ですよ 道具は有り合わせのものでも)
● . 釜一つあれば茶の湯はなるものを 数の道具を持つは愚な
(丿貫【へちかん】や粟田口善法という人たちは 手取釜一つで 茶の湯をなしていましたよ)
● . 数多くある道具を押しかくし 無きがまねする人も愚な
(多くの道具を待ちたがるのも愚かですが あるのに隠して 活用しないのも愚かですよ)
97 . 茶の湯には 梅寒菊に黄葉【きば】み落ち青竹枯木あかつきの霜
(茶の湯には 季節感が大切ですよ また 青・朱・黄・白・黒といった五行や 陰陽の対比・調和が必要ですよ)
98 . 茶の湯とはただ湯をわかし茶をたてて のむばかりなる事と知るべし
(十よりかえった元のその一 が すなわち ただ湯を沸かして茶を飲むだけ のことですよ それができているでしょうか?)
99 . もとよりもなき古【いにしへ】の法なれど 今ぞ極【きわ】まる本来の法
(その道に入ろうと思った時には 何も無かった心の中に 内なるものが できているでしょうか?)
100 . 規矩【きく】作法守りつくして破るとも離るるとても 本を忘るな
(守破離【しゅはり】の順に 先生・先人の教えから旅立っても 内なる心の中心には常に 「基本・根本」を置いているでしょうか?)